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 本日ここに、足立学園高等学校創立90周年記念式典を挙行するにあたり、三郷市長木津様、潤徳学園理事長鈴木様、初鹿野理事長をはじめとする学園役員の皆様、同窓会、PTA役員の皆様方のご臨席を賜り、心より御礼申し上げます。

さて、90年の歴史を振り返ると、昭和4年に堀内亮一先生をはじめとするこの地域の有志の方々が、「千住の地に有為な人材を育成する中等教育の場を」という理念のもとに設立されました。初代校長の牧野菊之助先生は建学の方針として「質実剛健の気風を養うこと」「有為敢闘の中堅国民を養成すること」と掲げられ、これは「質実剛健」「有為敢闘」という建学の精神として現在まで脈々と受け継がれています。以後、昭和・平成と激変する時代の中で幾多の困難に遭遇してまいりましたが、その都度、この地域の方々に支えられ、歴代の理事長・校長をはじめ、学園役員・教職員・生徒が一丸となって乗り越え、飛躍を遂げてまいりました。この先輩方、地域の皆様方の思いを知り、今の足立学園の在り方、そして今の私たちの在り方を考える。本日の式典の意味はここにあります。

 来るべき時代に社会は、現在以上に政治・経済・文化等様々な面で国際的な相互依存関係が深まる一方で、摩擦や競争が激化してくると言われています。また、分子レベルの生命の研究や原子レベルの物質の研究、情報手段の高度化、とりわけAIの台頭など科学技術は飛躍的に進展し、社会に大きな影響を与えることでしょう。その上、環境、エネルギー、食糧、少子高齢化など課題が山積しています。

 しかしながら、どの時代においても人類は英知を集め困難を乗り越え、克服してまいりました。明治維新、昭和の戦後の未曽有の国難に対し、官民一体となって切り抜けてきました。特に、その時代の若者たちの「志」情熱、発想、行動力とエネルギーが困難な課題を解決してきたのです。今まさに、在校生の皆さんの可能性に、我が国や世界の未来がかかっていると言っても過言ではありません。

 伝経大師・最澄の言葉に「径寸十枚是国宝に非ず。一隅を照らす此れ則ち国宝為り」とあります。簡単に説明すると、お金や財宝は国の宝ではなく、家庭や職場など自分自身が置かれたその場で精一杯努力し、明るく光り輝くことのできる人こそ、何物にも変えがたい貴い国の宝であるという意味です。一人一人が、それぞれの持ち場で全力を尽くすことで社会全体が明るく照らされていきます。自分の為ばかりでなく、人の幸せ、人類すべての幸せを求めるために大きな「志」を持ち、世のため人のために何を成し遂げるべきかを探究し、興味・関心を大切に育て、目先の利益にとらわれることなく自分の道を切り拓いていって欲しいと思います。青春は輝く時であり、青春は失敗をも消化し、それすらも人生の糧にしてくれるのです。失敗に臆することなく挑戦していって下さい。幸い皆さんには、脈々と受け継がれた「質実剛健」「有為敢闘」の精神があり、90年の歴史の中、培われた気概と意気があります。三万有余名の卒業生に続き、地上の星のごとく、自分が照らすべき一隅を求め、21世紀の社会を切り拓いてくれることを確信しています。

 この記念すべき式典に当たり、伝統ある本校に学ぶ誇りを改めて自覚し、未来を見通す目を養うために、日々確かな学習を積み上げ、風雪に耐えてきたシンボルツリーのヒマラヤ杉のような本校の歩みに、新たな年輪を重ねていって下さい。

 最後になりますが、今後とも教職員と生徒が一体となり、過去に学び、未来を切り拓く力を備えもった有為な人材の育成に努めてまいる所存でございます。
どうかご臨席いただきました皆様には、本校が益々発展できますよう、重ねてご支援、ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げまして、式辞とさせていただきます。

令和元年 6月21日
足立学園中学校・高等学校
校 長   井 上  実