新着情報

news

 まず、新型コロナウイルス対策として多大な制約のもとでの第74回卒業証書授与式の挙行を、心よりお詫び申し上げます。
卒業生の皆さんにとりましては、この晴れの日に在校生の見送りも制限され、さぞかし寂しい思いをされていることと思います。
また、保護者の皆様方、感染予防とはいえ、各家庭1名という制限をさせていただき、誠に申し訳ございません。

 さて、ただ今卒業証書を授与いたしました365名の卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。
今、新しい世界に足を踏み出そうとする皆さんの心の中には、この3年間の色々な思い出が去就していることと思います。何と言っても、新型コロナウイルスに翻弄された2年間でした。緊急事態宣言の発出に伴う突然の休校、慣れないオンライン授業、高校生活における最大行事ともいえる修学旅行の中止、男子校ならではの迫力とエネルギーに富んだ体育祭の中止、思い出に残るはずの学園祭が、満足に実施することが困難な状態となってしまいました。さらには、センター試験が大学入試共通テストに変更されて2年目となり、より思考力や文章読解力を問われ、その変革に戸惑う中での大学受験となりました。
しかしながら、皆さんはその一つ一つの困難を見事に克服されて本日を迎えています。過去において、これほどまでに、数々の困難が波状攻撃のように押し寄せ、それを克服できたことがあったでしょうか。この経験は竹が風雨にさらされることで、太く丈夫な節目を創り出すように、皆さん一人ひとりの心の奥底にしっかりと刻み込まれ、今後の人生に大きな糧となることと信じております。また、皆さんが歩んできた足跡は、後に続く後輩達にとって明確な道標となることでしょう。その実績に対し心より称賛の意を表したいと思います。

 本日をもって、皆さんは高等学校における「学び」の全過程を終了したわけですが、本来、「学び」の目的は人類貢献・社会貢献にあると思います。社会に出て、自分の資質能力を発揮する。世のため人のために少しでも貢献できるようにすることが、本当の意味での「自己表現」ではないでしょうか。そのために「学ぶ」のであり、その学びはこれからもずっと繋がっていくのです。世の中は飛躍的なスピードで変わっています。今までの経験則では理解できないような事柄に遭遇します。予測不能な未来において、何かを成し遂げるためには、しっかりとした理想をもち、その理想に近づくために努力をしていかなければなりません。『坂の上の雲』には、激動の明治時代において、自分の為すべきことを探究し、その実現にむけて努力した3名の若者達の生き様が描かれています。長く、真っすぐな坂の上に見える青い空、そこに浮かぶ白い雲を、自分の理想と捉え、日々坂道をのぼり理想に近づこうと努力する。しかし、なかなか雲に近づくことはできません。それでも、信念をもって近づくための努力をし続ける。その様な生き様は、現在にも求められていることではないでしょうか。私が皆さんの大学受験にむけて送った言葉「青雲の志」とは、その様な意味を持っています。

 インプットされた知識をはき出すだけでは通用しない時代に突入していると言えるでしょう。様々な知識や物の見方、考え方をもって、クリエイティブな発想をすることで新しい智や価値観を構築してこそ、新しい時代において活躍できる人財となるのです。大切なことは「外に向けた思考」をもつことです。自分の能力をたかめたい、人から認められたい、経済的に恵まれたい云々は、全てベクトルが自分に向いています。その様な夢をもつことも大切ですが、同時に自分の「学び」が周囲にとって、社会にとって、世界にとって、どの様に役立つのかを考えて努力することが重要です。本校の建学の精神である「質実剛健・有為敢闘」とは、まさに、そういう意味なのです。自分の学びを活用し、困難や試練に対し果敢に挑戦してくことで、その経験は、必ず皆さんの「思考」「感性」「勇気」を磨き、これからの人生に大きな力となることを確信しています。

 私は日頃より皆さんに「夢なき者に成功なし」と吉田松陰の言葉を借りて伝えています。例え小さな事であろうとも、世のため人のためにという思いを持ち、その夢の達成のために自分の人生をかける覚悟をもった夢、すなわち「志」「理想」をもち、その実現に向けて最大限の努力を続けていってください。次のステージにおいても継続していく「学び」が、世のため人のために一隅を照らすべきものとなるように、全身全霊をもって頑張っていって下さい。

 また、皆さんは、本日この瞬間より、足立学園同窓会の一員として、生涯の友として生きていくことになります。いかなる試練や困難に出会っても、その苦しみを分かち合い、勇気と希望を与えてくれる友がいます。互いに尊敬し合い、助け合い、太くて長い絆を構築していってください。

 保護者の皆様方、ご子息のご卒業を心よりお祝い申し上げます。皆様方にはこの3年間、あるいは6年間、本校の教育活動に、ご理解とご支援を賜り、誠にありがとうございました。厚く御礼申し上げます。

 結びとなりますが「筑波の高嶺を目指し、いざや、登らん嶺の極み、図南の鳳翼いまこそ振るえ、夢なき者に成功なし 足立健児よ」
とエールを送り、卒業生の未来に幸多からんことを祈念し、式辞とさせていただきます。

    
令和4年3月5日
足立学園高等学校
       校長 井上 実