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まず、新型コロナウイルス対策として多大な制約のもとでの第73回卒業証書授与式の挙行となりましたことを、心よりお詫び申し上げます。
卒業生の皆さんにとりましては、この晴れの日に在校生の見送りも制限され、さぞかし寂しい思いをされていることと思います。
また、保護者の皆様方、感染予防とはいえ、各家庭1名という制限をさせていただき、誠に申し訳ございません。
さらには、1年間、謝恩会の準備に取り組んでいただきました卒業対策委員の皆様方には、謝恩会を中止せざるを得なくなりましたことに、心よりお詫び申し上げますと同時に、そのご苦労に対し深く御礼申し上げます。

さて、ただ今卒業証書を授与いたしました289名の卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。
今、新しい世界に足を踏み出そうとする皆さんの心の中には、この3年間の色々な思い出が去就していることと思います。
何と言っても、新型コロナウィルスに翻弄された1年間でした。
緊急事態宣言の発出に伴う突然の休校、慣れないオンライン授業、高校生活における最大行事ともいえる修学旅行の中止、男子校ならではの迫力とエネルギーに富んだ体育祭の中止、思い出に残るはずの学園祭が、満足に実施することが困難な状態となってしまいました。
さらには、センター試験が大学入試共通テストに変更され、より思考力を問われ、英語においては直前まで方針が定まらない中で大学受験をむかえるという結果になりました。
しかしながら、皆さんはその一つひとつの困難を見事に克服されて本日を迎えています。
過去において、これほどまでに、数々の困難が波状攻撃のように押し寄せ、それを克服できたことがあったでしょうか。
この経験は竹が風雨にさらされることで、太く丈夫な節目を創り出すように皆さん一人ひとりの心の奥底にしっかりと刻み込まれ、今後の人生に大きな糧となることと信じております。
また、皆さんが歩んできた足跡は、後に続く後輩達にとって明確な道標となることでしょう。
その実績に対し心より称賛の意を表したいと思います。

本日をもって、皆さんは高等学校における「学び」の全過程を終了したわけですが、本来、「学び」の目的は人類貢献・社会貢献にあると思います。
社会に出て、自分の資質能力を発揮する。世のため人のために少しでも貢献できるようにすることが、本当の意味での「自己表現」ではないでしょうか。
そのために「学ぶ」のであり、その学びはこれからもずっと繋がっていくのです。
インプットされた知識をはき出すだけでは通用しない時代が迫っています。
様々な知識や物の見方、考え方をもって、クリエイティブな発想をすることで新しい智や価値観を構築してこそ、新しい時代において活躍できる人財となるのです。
大切なことは「外に向けた思考」を持つことです。
自分の能力を高めたい、人から認められたい、経済的に恵まれたい云々は全てベクトルが自分に向いています。
自分の「学び」が周囲にとって、社会にとって、世界にとってどの様に役立つのかを考えて努力することが重要です。
本校の建学の精神である「質実剛健・有為敢闘」とはまさに、そういう意味なのです。
自分の学びを活用し、困難や試練に対し果敢に挑戦してくことで、その経験は、必ず皆さんの「思考」「感性」「勇気」を磨き、これからの人生に大きな力となることを確信しています。

私は日頃より皆さんに「夢亡き者に成功なし」と吉田松陰の言葉をか借りて伝えています。
この場合の「夢」とは単に自分の幸せのみを求める夢ではありません。
例え小さな事であろうとも、世のため人のためにという思いを持ち、その夢の達成のために自分の人生をかける覚悟をもった夢、すなわち「志」の事なのです。
しかし志はたてただけでは実現できません。
人生には求めたものだけが手に入るという法則があります。
言い換えれば、人の心の持ち方や求めるものが、そのままその人の人生を現実に形作っていくのであり、事を成そうと思ったら、まずこうありたい、こうあるべきだと思うこと。
それも誰よりも強く、身が焦げる程の熱意をもって、そうありたいと願望することが、達成にむけての努力に繋がっていくのだと思います。
次のステージにおいても継続していく「学び」が世のため人のために一隅を照らすべきものとなるように、全身全霊をもって頑張っていって下さい。

また、皆さんは本日この瞬間より、足立学園同窓会の一員として、生涯の友として生きていくことになります。
いかなる試練や困難に出会っても、その苦しみを分かち合い、勇気と希望を与えてくれる友がいます。
互いに尊敬しあい、助け合い太くて長い絆を構築していってください。

保護者の皆様方、ご子息のご卒業を心よりお祝い申し上げます。
皆様方にはこの3年間、あるいは6年間、本校の教育活動にご理解とご支援を賜り、誠にありがとうございました。
厚く御礼申し上げます。

結びとなりますがもう一度、「夢亡き者に成功なし、志をたてて挑戦せよ 足立健児よ」
とエールを送り、卒業生の未来に幸多からんことを祈念し、式辞とさせていただきます。

    
令和3年3月6日
足立学園高等学校
       校長 井上 実