桜のつぼみも日増しに膨らみ、陽光うららかなこの良き日に、初鹿野理事長先生を初めとする学園役員の先生方、同窓会・PTA会長、並びに多数の保護者・ご家族の皆様方のご臨席を賜り、足立学園中学校第四十四回の卒業証書授与式を挙行できますことを、心より御礼申し上げます。
さて、ただ今卒業証書を授与されました154名の卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。今、次のステージに足を踏み出そうとしている皆さんの心の中には、この3年間の色々な思い出が去就していることと思います。
新型コロナウイルスの影響が残る中で入学し、一つ一つの教育活動が新たな形として見直され、次第に平常に戻っていく過程の中で健気にそして、真剣に取り組んできた皆さんの姿が目に焼き付いています。
1年次の4月に実施された山中湖での校外学習、通常の半分の距離で再開された強歩大会、限られた競技種目で実施された体育祭、入場者が制限された中で再開された学園祭等、様々な戸惑いの中で学校生活を送ってきたことと思いますが、その様な変化に対して見事に適応し、学業やクラブ活動だけではなく、数々の経験を積み人間力を培ってきたことに心より敬意を表し、心より「ありがとう」と伝えたいと思います。そうした力は必ず将来のためになるものと思っています。
中学校卒業とは義務教育9年間の全課程を修了したことを意味し、同時にその証書は皆さんの努力の成果というべきものです。この3年間の皆さんの努力の成果はこれからの人生において、何物にも変えがたい財産となることでしょう。
しかし、そうした成果は決して自分1人で成し得るものではありません。記憶には残っていないでしょうが、14年前、1才になるかならないかで経験した東日本大震災、そして小学校5年生時の新型コロナウイルスによる緊急事態宣言。さらには、その中での中学校選び。その時々において、常に寄り添い、絶え間なく愛情を注ぎ続け、これからも注ぎ続けてくれるご両親・ご家族に、今日の卒業に際して心より「ありがとうございました」と感謝の気持ちを伝えて下さい。感謝の気持ちを持てる人間は、人に対する優しさ思いやりを備え、回りからも愛される存在、ありがとうと言われる存在へと成長できます。それこそが志の原点なのです。
東日本大震災から復興の途中にある地域も多い中、大船渡での大規模火災、また、昨年の元日には能登半島地震がありました。これは決して対岸の火事ではありません。すべての日本人が、自分事として自分のできることを考え、一隅を照らすことが重要であると考えます。そのためにも人間力、学力を身に着け、より高度な人類貢献社会貢献を目指していってほしいと願っています。
志とは之ノ心と書きます。つまり、誰もが自分の心の奥底にある崇高な想いのことです。その想いを引き出して社会に貢献するための努力を続けていくことが人間的成長ということです。
心の奥底の崇高な想いを引き出すためには、感性を磨くことが大切です。それは、ただ物事に対して敏感になるだけではなく、もっと深いところで自分の内面を磨き上げることを指します。新しい視点や価値観を受け入れ、何か美しいことや異なる価値を見出すことです。例え、他人の行動が理解し難くても、その背後にある背景や感情を見ようとすることで、新たな感覚が開けてきます。感性が鈍くなると、周りを受け入れるどころか、不満が募り、他者に自分の価値基準を押し付けてしまいます。つまり、多様性に対して寛容さを失っている状態です。それでは美しい心は持てません。
今、AIを始めとする科学技術の進歩により、世の中は大きく変わっています。変化に振り回されるのではなく、この変化に乗じて自分の活路を切り開いていこうとするポジティブな考え方ができる時代でもある訳です。皆さんの能力は無限大です。どのような困難が立ちはだかろうとも、それを自分のスキルアップの為とポジティブにとらえ、失敗を恐れずに果敢に挑戦していって下さい。足立学園中学校の卒業生として、豊かな美しい心を持ち、胸を張り、誇りをもって突き進む姿が、後輩たちの「道標」になると確信しています。
皆さんの大半は足立学園高等学校に進学するわけですが、何事に対しても真剣に取り組む姿勢を示し、やればできるという自信、自分は尊い存在であるという自尊心、これだけのことをやったという自負心、自分は認められるべき存在であるという自己肯定感を備え、誇りを持って歩んで行ってください。
保護者の皆様方、ご子息のご卒業を心よりお祝い申し上げます。皆様方にはこの3年間、本校の教育活動にご理解とご支援を賜り、誠にありがとうございました。厚く御礼申し上げます。
日々の教育活動を通じて、皆様のご子息に対する愛情の深さ、本学園に対する期待の大きさを痛感しております。その期待に応えられるように教職員一同、更なる努力を続けてまいる所存でおります。そして、この先ご子息方は高校生へと成長していきます。自立を目指す上で大切なステージとなります。引き続きご子息を信じ、尊重しバックアップしていただけますようお願いいたします。
結びとなりますが、心の扉は内側からしか開きません。自分自身で扉を開き、吸収しよう成長しようと強く思うことが大切です。その様な素直さをもって立ち向かっていってください。
「夢なき者に成功なし、志を立てて挑戦せよ 足立健児よ」
とエールを送り、卒業生の未来に幸多からんことを祈念申し上げ、式辞とさせていただきます。
令和7年3月22日
足立学園中学校
校長 井上 実