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日増しに春の気配が色濃くなり、暖かさも増す今日の良き日に、初鹿野理事長先生をはじめとするご来賓の皆様方、数多くの保護者、ご家族の皆様方のご臨席を賜り、第75回足立学園高等学校卒業証書授与式が挙行できますことを、心よりお慶び申し上げます。

さて、只今卒業証書を授与いたしました280名の卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。今、新しい世界に足を踏み出そうとする皆さんの心の中には、この3年間の色々な思い出が去就していることと思います。何と言っても、新型コロナウイルスに翻弄された3年間でした。緊急事態宣言の発出に伴い、人生における大切なけじめとなる入学式が中止となり、さらには休校からのスタート、慣れないオンライン授業に戸惑い、初めから不安だらけの高校生活となりました。
男子校ならではの迫力とエネルギーに富んだ体育祭の中止、思い出に残るはずの学園祭が、満足に実施することが困難な状態となってしまいました。
しかしながら、皆さんはその一つひとつの困難を見事に克服されて本日を迎えています。過去において、これほどまでに、数々の困難が波状攻撃のように押し寄せてきたことがあったでしょうか。この経験は竹が風雨にさらされることで、太く丈夫な節目を創り出すように、皆さん一人ひとりの心の奥底にしっかりと刻み込まれ、今後の人生に大きな糧となることと信じております。また、皆さんが歩んできた足跡は、後に続く後輩達にとって明確な道標となることでしょう。その実績に対し心より称賛の意を表したいと思います。

本日をもって、皆さんは高等学校における「学び」の全過程を終了したわけですが、本来、「学び」の目的は、人類貢献・社会貢献にあると思います。社会に出て、自分の資質能力を発揮する。世のため人のために少しでも貢献できるようにすることが、本当の意味での「自己表現」ではないでしょうか。そのために「学
ぶ」のであり、その学びはこれからもずっと繋がっていくのです。

世の中は飛躍的なスピードで変わっています。今までの経験則では理解できないような事柄に遭遇します。予測不能な未来において、何かを成し遂げるためには、しっかりとした理想をもち、その理想に近づくために努力をしていかなければなりません。インプットされた知識をはき出すだけでは通用しない時代に突入していると言えるでしょう。様々な知識や物の見方、考え方をもって、クリエイティブな発想をすることで新しい智や価値観を構築してこそ、新しい時代において活躍できる人財となるのです。大切なことは「外に向けた思考」をもつことです。自分の能力をたかめたい、人から認められたい、経済的に恵まれたい云々は、すべてベクトルが自分に向いています。その様な夢を持つことも大切ですが、同時に自分の「学び」が、周囲にとって、社会にとって、世界にとって、どの様に役立つのかを考えて努力することが重要です。本校の建学の精神である質実剛健・有為敢闘とはまさに、そういう意味なのです。自分の学びを活用し、困難や試練に対し果敢に挑戦してくことで、その経験は、必ず皆さんの「思考」「感性」「勇気」を磨き、これからの人生に大きな力となることと確信しています。

しかしながら、目がいくら高い所を見ていても、足は地面を踏むことしかできないように、夢や希望はいかに高くとも、現実にはくる日もくる日も、地道な努力を積み重ね1mmでも、1cmでも前へ進めるために、一生懸命目の前に立ちはだかる問題を解決していくことが重要です。人生とは正に「今日1日の積み重ね」「今」の連続にほかなりません。今日1日を大切にし、懸命に真剣に生きていくことで、自然と明日が見えてきます。その明日をまた懸命に生きれば1週間が見え、継続していくことで未来が見えてくるはずです。つまり、ことさら先を見ようとしなくても、「今」という瞬間に全力を傾けて生きることによって、未来の姿が自然と見えるようになってくるものです。正にうさぎとカメの亀から学ぶ教訓の意味するところです。

「夢なき者に成功なし」というように、例え小さな事であろうとも、世のため人のためにという思いを持ち、その夢の達成のために自分の人生をかける覚悟をもった夢、すなわち「志」「理想」をもち、その実現に向けて1日1日、最大限の努力を続けていってください。次のステージにおいても継続していく「学び」が世のため人のために一隅を照らすべきものとなるように、全身全霊をもって頑張っていって下さい。

また、皆さんは、本日この瞬間より、足立学園同窓会の一員として、生涯の友として生きていくことになります。いかなる試練や困難に出会っても、その苦しみを分かち合い、勇気と希望を与えてくれる友がいます。互いに尊敬しあい、助け合い太くて長い絆を構築していってください。

保護者の皆様方、ご子息のご卒業を心よりお祝い申し上げます。皆様方にはこの3年間、あるいは6年間、本校の教育活動にご理解とご支援を賜り、誠にありがとうございました。厚く御礼申し上げます。

結びとなりますが「筑波の高嶺を目指し、いざや、登らん嶺の極み、図南の鳳翼いまこそ振るえ、夢なき者に成功なし 足立健児よ」
とエールを送り、卒業生の未来に幸多からんことを祈念し、式辞とさせていただきます。
    
令和5年3月4日
足立学園高等学校
   校長 井上 実