校長ブログ

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3月3日は高校卒業式、341名の生徒が巣立って行きました。私は卒業していく生徒に式辞として故事成語「人間万事塞翁が馬」の話を取り上げてみました。この故事成語については、私が40数年前受験勉強していた頃の記憶が蘇ってきます。当時の私には資料集を読んでもなるほどという実感が湧いてきませんでした。
しかし今になってこの言葉の重みを理解できるようになりました。人生には常に山あり谷ありで、必ずピンチはめぐってきます。その時にどう生きようとするかでその後の人生は決まってきます。いかなるピンチの時でも最善の方法は必ずあるはずです。ピンチこそチャンスです。そのことを示してくれたのが平昌オリンピックだったように思います。式辞では羽生結弦選手や高木美帆選手、小平奈緒選手の名前を挙げましたが、本当は女子カーリングの選手たちも称賛してあげたかったのです。
流氷の流れ着く北見市で育った彼女たちは、決して充分な練習環境ではなかったと思います。それでもくじけずに頑張りぬいた姿は、銅メダルをかけた3位決定戦に現れていたように思います。仲間とのコミュニケーションを大事にする彼女たちの競技姿勢。「そだねー」の言葉が競技場に響きます。銅メダルを決めた時の試合は「運が良かった」という人もいます。しかし私にはそう思えないのです。
日本チームは第1エンドからブロックを置き、その陰に自分のストーンを置きます。基本に忠実に競技を進めますが、イギリスチームはこの日本チームのストーンをことごとくはじいていきます。一進一退の攻防が続き、迎えた第10エンド。ハウスの中にはNO.1ストーンがイギリス、NO.2ストーンが日本。このままいけば第11エンドに突入。イギリスに負けはありません。ところがイギリスは「勝ち」を急いでしまいました。ほんの僅かだけ方向とスピードが狂いました。その結果イギリスチームが投げたストーンは自分のNO.1ストーンをはじきだし、日本のストーンには回転を与えて、NO.1ストーンにしてしまいました。我慢に我慢を重ねて、勝ち急いだ相手にミスを呼びこませたのです。この劇的な瞬間に私は思わず叫んでしまいました。見事でした。
振り返れば人生にはこのようなドラマがつきものです。「人間万事塞翁が馬」という故事成語は、その瞬間だけ見るならば辛い悲しい出来事も、次にそれがどう展開していくのかはわかりません。最後まであきらめないことが何よりも大事なことだろうと思います。
卒業生の皆さんにどこまで伝わったかはわかりませんが、心に刻んでいただければありがたいです。